· 

かつて流行した「サバカレー」について、いまさら

> ブログ

「サバカレー」

価格:税込246円(ホック塩冶店で購入)

 

好きな缶詰は?と聞かれたら、ツナ缶、鯖缶、イワシの味噌煮缶と答える。

少し前、スーパーの缶詰売り場でデザインに惹かれて買ってしまった。

インドのおじさんがサバを抱えている……このシュールな絵は何なんだ?」

予備知識なく購入して、最近食べてみた。

 

【食レポ】

大きめのサバがドサっと一切れ、中骨は無い。

生臭さというよりサバの臭い。一度揚げてあるのか、サバの竜田揚げのにおいがする。

1.5×1.5cmのジャガイモと人参が、予想より多めに入っていた。

ルーにはバターで炒めた玉ねぎが溶け込んで、スパーシーでピリ辛な味付け。

ご飯にかけるなら醤油を足したい。このままならパンにも合う。

結論は、値段以上に美味しい

(100円のサバ缶と100円のレトルトカレーを混ぜてレンチンするより、こっちの方が間違いなく高級)

 

 

しかし、この缶詰について調べてみると、色々なことがわかった。

 

製造:信田(しだ)缶詰株式会社

本社所在地:千葉県銚子市

明治38年(1905年)創業。いわし、くじらの缶詰製造から始まり、昭和22年(1947年)日本で初めてサンマ蒲焼缶詰を製造。以降、いわし、さば、さんま等の青魚を原料とした缶詰・瓶詰・パウチ食品を製造。「サバカレー」や「銚子風おでん」といったユニークな商品開発も高く評価されている。

工場から出た廃水は、魚が棲める清流に近い水質基準までに処理している。

(上記、同社ウェブサイトより)

 

と、ここまでは良かった。

 

さらに調べると、信田缶詰は2009年に民事再生を申請し事実上の倒産を経験している。

さらにさらに、2014年、輸出用のサバ缶の原料に冷凍サンマを使用して出荷する国際的偽装事件を引き起こしていた。

 

これは一体どういうことか。

 

元社長の信田臣一(しだ・しんいち)は昭和19年(1944年)生。

著書は『クジラが元気をくれるまち』(寿郎社、2001年出版)、共著『農・水産資源の有効活用とゼロミッション』( 恒星社厚生閣、2011年出版)がある。東京水産工科大学客員教授も勤めた。

 

信田臣一が41歳の1985年、プラザ合意が行われ一年間に1ドル250円から150円~125円へと急速に円高が進んだ。輸出量の多い缶詰業界は大打撃を受け、缶詰会社の廃業が相次いだ

 

1996年、あるテレビドラマが流行した。経営難に陥った九十九里浜の缶詰工場の立て直しに奮闘する物語で、タイトルは『コーチ』(1)主題歌は『田園』(2)。劇中に登場した「サバカレー」が商品化され大ヒットし、開発した信田缶詰には注文が殺到して一時は入手困難になるほどだった。翌年には「サバカレーの歌」も発売され、信田缶詰は絶頂期を迎える。

 

2000年代、信田臣一社長時代に主力得意先の統合により取引先が縮小、原料価格の高騰により仕入量を制限したため生産量低下、新工場建設に伴う資金負担増が収益を圧迫などが重なり、2008年8月期に1億8000万円の純損失を計上した。

翌2009年、原油価格の高騰などの理由で更に経営困難になった。負債額約37億円。

2009年5月、信田臣一は社長を辞任し相談役へ。北島芳紀が社長就任。

2009年8月、信田缶詰は民事再生法適用を申請し、事実上の倒産。しかし、再生手続き終了を目標に努力して製造を続けていた。

 

2011年、福島第一原発事故による放射能汚染問題に加え、1ドル75円という過去最大の高値が追い打ちとなり、原価が市場価格を上回る完全採算割れとなった。

定期的な工場視察に訪れた信田臣一は、同年11月、大手商社M社から受注生産(OEM)で製造していたサバ缶の原料に、冷凍サンマを使用していることを強く疑った。このサバ缶は、M社が中東向けに出荷していた“サバフレーク油漬け缶”であり、見た目や味でサバとサンマを区別するのは難しいという。M社の担当弁護士に連絡したところ、信田は相談役を解任されたうえ会社への出入り禁止を命じられた。つまり、M社、顧問弁護士、管財人のいずれもが、原料に安価な冷凍サンマを使う偽装を容認していたことになる。

 

2013年、信田缶詰の再生手続き終了。

 

2015年、M社系列のマルイチ産商が信田缶詰の株式を取得し、連結子会社化した。その際、2014年の輸出用サバ缶300万個に冷凍サンマを混ぜていたことが内部通報により発覚した。直ちに出荷先企業に謝罪し、賠償金を支払って和解したという。なお、15年製造品に混入はなく、13年以前の製造分については調査されなかった。

信田臣一は、M社によって起こされた国際偽装事件にもかかわらず「系列子会社の偽装事件」と矮小化されて報道されたと、メールマガジン(『オルタ』148号、2016年)で述べている。

 

テレビドラマ以上にドラマチックな過去を持つ(株)信田缶詰は、現在、

「安全・安心な商品の供給を通じて社会に貢献し、お客様と社員に幸せを届ける」事を目的とし、信頼ある企業となり続ける努力をしています。

(信田缶詰URL:  http://www.shidakanzume.jp/company/)

ということである。

ちょっと応援したくなった。

 

(1)『コーチ』:1996年7月14日~9月19日、毎週木曜日22:00~22:54、フジテレビにて放送され、最終話の視聴率は21.5%。主演は浅野温子、玉置浩二。その他の出演は、鈴木杏樹、西村雅彦、井ノ原快彦、高島礼子、石田純一など豪華な顔ぶれだった。

(2)『田園』:作詞 玉置浩二、須藤晃、作曲 玉置浩二。1996年7月発売。Wikipediaによると、「歌詞は安全地帯の活動休止後における玉置が精神的に不安定であった時期の事を題材としている」とのこと。また、「タレントのビートたけしは(中略)1994年8月に原付バイクでの事故により(中略)悲観していた時に、酒を飲みながら良く聴いていたと語っている」らしい。

 

IPT鍼灸院 藤原淳詞